会議種別:
議院運営委員会
会議日時:
2013年3月11日(月曜日)午前9時開会

※全ての議事内容は国会会議録検索システムにてご確認ください。

発言者 発言内容
委員長  次に、日本銀行総裁の任命同意に関する件を議題といたします。
 候補者から所信を聴取いたします。黒田東彦君。
参考人
(黒田東彦君)
 黒田でございます。
 本日、こうした機会を与えられましたことに対しまして、深く感謝をいたしております。
 私は、二〇〇五年の二月からアジア開発銀行の総裁としてアジアの経済発展と貧困削減に取り組んでまいりました。この間、アジアは、世界金融危機から他地域に先駆けて回復し、高い経済成長で世界経済を牽引しております。日本は様々な形で支援を行いまして、アジア諸国の経済成長に大きく貢献してまいりました。また、日本はアジア諸国の貿易相手国としても極めて大きな地位を占めております。その意味で、日本がデフレから脱却し、持続的な経済成長に復するということは、アジア、さらには世界からも期待されていることだと考えております。
 しかしながら、日本経済は十五年近くデフレに苦しんできました。これは世界的に見ても異例なことです。物価が下落する中で、賃金、収益が圧縮され、消費、投資が減少するということで、更なる物価下落に陥るという悪循環が日本経済を劣化させています。デフレからの早期脱却は、日本経済が抱える最大の課題であります。
 物価安定は中央銀行の責務であり、デフレ脱却における日本銀行の役割は極めて重要です。過去十数年間、日本銀行は様々な取組を行ってまいりましたが、デフレ脱却には至りませんでした。しかし、現在、政府がデフレ脱却と経済再生を実現する方針を明らかにし、緊急経済対策などの対応を取ったことが好感され、景気回復の期待を先取りする形で株価が回復し始めています。
 中でも、本年一月の共同声明は、政府と日銀がそれぞれの課題を明確に設定し、責任を持ってそれを実現することを宣言したものであり、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けた大きな第一歩だと思います。特に、日本銀行が二%の物価安定目標を設定し、これをできるだけ早期に実現することをはっきり宣言したことは極めて画期的なことと評価しております。もし私が総裁に選任されましたならば、この物価安定目標を一日も早く実現することが何よりも重要な使命となると考えております。
 これまで、日本銀行は、デフレ脱却に向け、国債だけでなく社債、ETFなど様々な資産を買い入れてきました。その点は評価できますが、その規模、具体的な買入れ対象などについては、できるだけ早期に二%の物価上昇を実現するという強いコミットメントを実現するために十分なものとは言えません。資産買入れを始めとする具体的な緩和方法について、市場への影響なども見極めつつ、何が最も効果的なやり方かを探っていくことが必要です。
 また、金利引下げ余地が乏しい現状では、金融政策運営について市場の期待に働きかけることが不可欠です。私が総裁に選任されましたならば、市場とのコミュニケーションを通じて、デフレ脱却に向け、やれることは何でもやるという姿勢を明確に打ち出していきたいと考えています。
 さらに、政府との連携確保も重要です。具体的な金融緩和の手法については、基本的に日本銀行に任せるべきですが、金融政策は、政府の経済政策と整合性を持って運営することで、より高い効果を発揮できるわけでございます。政府と日銀のより緊密な意思疎通が重要だと考えております。
 一方、共同声明では、政府は、機動的な財政政策、成長力、競争力強化、中長期的な財政健全化に取り組むこととされています。もとより、日本銀行は、自らの責任において、物価安定目標の早期実現を目指して金融緩和を推進するものです。ただ、金融緩和と並行して、政府が実需をつくり出し、消費、投資の拡大を通じて賃金、雇用を改善することができれば、そこから更なる物価上昇につながる好循環が期待できます。また、財政運営への信認低下による金利上昇を避けるため、中長期的な財政健全化に取り組むことも重要です。共同声明に沿った政府の取組を期待したいと思います。
 また、日本銀行として、経済、金融のグローバル化に対応することも重要です。日本銀行は、物価の安定だけでなく、金融システムの安定という使命を負っておりますけれども、近年、金融規制などについて中央銀行間の連携協力は重要性を増しています。また、金融政策の意図や方向性について、諸外国に説明する機会も増えています。各国中央銀行などとの連携、調整に努めることが重要だと考えています。
 私は、これまで、政府機関、国際金融機関、大学などで勤務してきましたが、どのような職務にあるときも、与えられた職責を果たすため最善を尽くしてまいりました。日本経済が重要な局面にある中で、日本銀行総裁の果たすべき役割は極めて重大です。もしその重責を果たすべき機会を与えていただければ、これまでの経歴で培ってきた経済、国際金融についての知見、内外の人的ネットワーク、組織のトップとしてのマネジメント経験などを生かし、全身全霊を込めてその職務に邁進していく所存でございます。
(省略)
委員長  これより候補者に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
(省略)
広野ただし  生活の党の広野ただしです。
 参考人には、非常に丁重な真摯なまた受け答えをしておられまして、ありがとうございます。私の場合、時間が十分に制限されておりますので、そこの点は簡潔にひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 二%の物価安定目標、私はデフレ脱却は大事なことだと、こう思っておりますが、その過程ですとかその結果がマネーゲームに陥るとか、場合によってはスタグフレーションになっていくというようなことも懸念されるわけであります。出口戦略とも非常に関係するわけなんですけれども、それで、三つちょっとお聞きをしたいと思います。
 まずは、実体経済がうまく付いてこない、実体経済の上昇がうまく付いてこないということになりますと、まさにマネーゲーム的な、大々的な金融緩和によってマネーゲーム的なことが現出をするということが懸念されるわけです。現在の、現状がそうだとは言っておりませんけれども、それが更に行きますとバブル的な点も出てくるし、そういう懸念もあるということが第一点です。それと併せて、スタグフレーション、賃金所得が上がらないという中で、あるいは経済が付いてこないという中でインフレだけが進行する、不況の中でのスタグフレーションというようなことがどうなるかというのがこの第一点であります。
 それと、出口戦略の方とも関係するんですが、年間二%物価上昇が二年後に例えば達成される、その後もずっとそれを継続するという共同声明だと思っております。そうしますと、任期五年間のうちに、例えば最初の二年間で二%、その後の三年間が二%ずつとこう行きますと、全体的に八%、九%上がると、こういうことになってまいります。
 所得が、あるいは賃金がそこに付いていくのかどうかというところが非常に問題で、そういう場合に、例えば全体を、様子を見ながら一%台に落としていく。今まで大体、当面目標が一%だったわけですけれども、そういうようなことも重要じゃないかと思うんですが、それが第二点です。
 三番目が、先ほどからもありますが、アメリカのFRBがやりますような失業率目標的なこと。私は、やっぱり日本は、四%ということであれば、三%を切る、二%台に持っていくということも、これは金融政策ばっかりでできるわけじゃありませんけれども、やっぱり日銀としてそういう方向を持っていくということが非常に大事なんじゃないかと、こう思っております。
 その三点について、簡潔によろしくお願いします。
参考人
(黒田東彦君)
 実体経済にどのような影響が出るかということでございますが、もちろん金融資本市場への影響というのがまず出て、それが実体経済に波及していく、反映されていくというのが普通のルートだと思いますけれども、マネーゲームが今起こりそうな状況には必ずしもないと思いますし、十五年続きのデフレから脱却することによって実体経済にとってもプラスになり、スタグフレーションというような事態は起こらないようにできると、逆に言うとそうしなければならないというふうに思います。
 二番目の出口戦略の点でございますが、これは、既に二%を達成していて、その面では問題のない、例えばFRBがデュアルマンデートに従って六・五%の失業率達成まで無制限の緩和を続けるというコミットメントをしているわけで、これはこれで米国の状況として適切だと思いますけれども、我が国の場合は依然として賃金、物価が低下しているという状況でございますので、何よりもまずその二%の物価安定目標を達成するということが大事だと思います。
 したがいまして、達成できた後も別の考慮から、例えば一%を目標に下げていくとか、そういう必要はないと思いますし、あくまでも二%というのは中期的なアンカーのようになって、そういうものをベースに国民経済が健全に発展していくということを期待しているわけでございますので、二%の物価安定目標というのは当面続けていき、達成された後も当然続けていく必要があるというふうに思っております。ただ、そのことは、それよりもどんどん高くなっていってインフレを放置するということではなくて、あくまでも二%という物価安定目標に向けてインフレもデフレも排除するということだと思います。
 最後の点につきましては、雇用の問題は当然考慮しなければならないと思いますが、委員御指摘のとおり、雇用については政府の政策の果たす役割が大きいわけでございまして、中央銀行としてそういうものを十分考慮することは当然だと思いますが、中央銀行としてデュアルマンデートのあるFRBと違って、日本銀行が失業率についての目標を立てるということは、現行法の下では適切でないというふうに思っております。
広野ただし  その二%物価目標が経済にビルトインされていってそれが持続をされると。ところが、失業率は下がらない、賃金あるいは所得が上がらないという実態がまず来ましたらば、その二%というのを見直さないんですか。
参考人
(黒田東彦君)
 そういう際に、仮にですけれども、そういう事態が起こったときに、物価安定目標を下げて金融を引き締めるということは、決して経済にとってプラスにならないと思います、賃金や雇用の確保といった面でもですね。
 ですから、あくまでもインフレでもないデフレでもない物価の安定が中央銀行の使命であって、それを中期的に実現していくと。それが中期的なアンカーになってくれば、それが国民経済の健全な発展に資すると。具体的な失業率の目標とか見通しとかそういうものは、少なくともほとんどの中央銀行はそういうものを目標、目的にはしておらないということだと思います。
広野ただし  その点がちょっと懸念をされるわけですね。失業率とかあるいは賃金、所得のターゲティングが定まらない中で、それは重要視はするとはいうものの、二%台の、二%の物価目標はぐっとやっていくということが、国民所得、国民全体、私たちは国民生活が第一だと、人を大切にする政治をするんだと、こういう中で、それも非常にちょっと懸念をされると思っております。
 最後に、中小企業金融であります。
 日本の経済、九九%は中小企業であります。その中で、具体的に先ほど支店の話とかおっしゃっていましたが、第二地銀ですとか信金、信組ですね、そういう中小企業担当金融機関との関係ですね。特に、グローバルスタンダードの大手銀行は、それは資本比率が八パー、一〇パーとかというのはいいですが、地銀以下は国内ですから四%というダブルスタンダードに言わばなっているわけですが、更にそれをしっかりと、地域経済あるいは中小企業をしっかりするために、もっとそれにこだわらずやっていくという考え方はありませんか。
参考人
(黒田東彦君)
 金融規制の問題につきましては、基本的に政府の責任でございますが、御指摘の規制、いわゆるバーゼル3に沿って行われていまして、欧州は基本的に全てバーゼル3を守るということになっておりますが、米国はまだ合意していないわけですね。ただ、その中でも米国の場合は、大手銀行は全てもうバーゼル3の最終目標にほとんど達しようとしているぐらいで、経過措置も必要ないぐらいもうどんどん進めているわけですが、数千ある米国の中小銀行はそもそもバーゼル3の下にないわけですね。
 ですから、そういうことも踏まえて恐らく政府は、大手銀行とそれ以外の、つまり国際的な取引をする大手銀行は共通のルールで行い、中小金融機関で国内で営業している者についてはそれとは少し違ったルールでやるということをやっておられるんだと思いますが、それ自体は私は適切なことだと思いますけれども、中央銀行としては、やはり何としても金融システムの安定ということが重要でありまして、その中でどのようにして中小企業金融を助けていくかと。
 中小企業金融の場合、どうしても銀行依存ですので、御指摘のような中小金融機関が融資をしやすい環境をどのようにつくっていくかということについては中央銀行としても努める必要がありますし、十分政府とも協議をしていく必要があると思っております。
広野ただし  時間が来ましたので、ありがとうございました。