会議種別:
参議院議院運営委員会
会議日時:
2013年3月12日(火曜日)午前9時開会

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発言者 発言内容
委員長  次に、日本銀行副総裁の任命同意に関する件を議題といたします。
 候補者から所信を聴取いたします。
 まず、岩田規久男君にお願いいたします。岩田規久男君。
参考人
(岩田規久男君)
 学習院大学の岩田でございます。
 本日は、所信を述べる機会をいただきましてありがとうございます。
 私は、東京大学の大学院博士課程を修了した後に、一九七三年に上智大学で教鞭を執り、一九九八年からは学習院大学で教鞭と、研究と学生の指導に当たってまいりました。専攻は金融論や経済政策でありまして、初期のころは都市経済学も研究していたのでありますが、その後、国際経済学者として名高い小宮隆太郎先生の下で金融論の研究あるいはマクロ経済学の研究を始めまして、現在は金融論を中心に研究を続けてまいりました。
 この度、日銀の副総裁にもしも任命いただきましたならば、これまで蓄積した学問上の知識、それを十分に生かして、あるいは今まで行ってまいりました政策提言を現実の政策に生かして、全力で職務を遂行してまいりたいというふうに思っております。
 今日は、我が国のデフレとあるべき金融政策について私の考えを述べさせていただきます。
 日本では長期のデフレが続いております。一九九二年以降、原油価格の高騰や消費税増税の影響を除くと、インフレ率はずっと二%を割り込み、一九九八年からは消費者物価で見るとずっとマイナス、ほぼマイナスが続いております。こうした状況で、人々が、結局将来もデフレが続くだろうというデフレ予想あるいはデフレ期待を抱いてしまう。そうすると、そういうデフレ期待の下でいろいろな行動をしますために、実際にもデフレになってしまうという悪循環に陥っております。デフレ予想が蔓延しますと、企業も家計も基本的にお金を持ったままでいれば自然に購買力も上がるということで、投資や消費を抑制するようになっております。これが日本の経済の低成長と円高をもたらしてきた要因だというふうに思います。
 こうした状況を踏まえて、日本経済を再生するために安倍政権が大胆な金融政策、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略という三本の矢を出したわけですが、私は、この三本の矢は日本経済の好循環をつくり出すためにうまく使うと非常に適切な組合せじゃないかというふうに思っております。
 その三本の矢の中で、私は、要になるのは金融政策ではないかというふうに思っております。金融政策というのはデフレ予想をもたらす要因にもなりますが、それをひっくり返して人々や企業の間にインフレ予想に形成を促すという機能も持っております。そうしますと、そのようなデフレ予想をインフレ予想に転換するということを金融政策がやっていくための、第一に金融政策がやるべきことは、市場に対して消費者物価の上昇率を、これは二%を一応約束していますが、これは必ず達成するという、これは全責任を持って日本銀行が達成するんだということを家計や企業あるいはマーケットに信用してもらうということが一番大事であります。これを金融政策が例えば二%のインフレ目標にコミットするといいます。今までは、日本銀行はそのコミットメントが足りないということが市場の期待形成にうまく働きかけることができなかったのではないかというのが私の持論であります。
 もしもインフレ率が上昇するということになれば、現金を持つよりも株式を買う、外貨を買うという行動に出てまいります。その行動は既に出ておりまして、そのために株高、円安になっている。そして、こうした市場が変化すると、企業の設備投資が増えていく、円安になれば輸出が増える、企業収益が増加していき、それが雇用の増加につながり、やがて賃金が上がってくるという循環で、その賃金が上がる中で消費もまた更に回復するということで需給ギャップがなくなって現実の物価が上昇につながると。
 この過程で、銀行の貸出しは当初増える必要はございません。なぜかといいますと、デフレが長く続いたために、家計のみならず、企業までもが現金、預金等の金融資産を大量に保有しています。現金、預金の残高は、金融機関でない企業、普通の企業ですが、が今や二百二十兆円にも上る現金、預金を持っております。これが凍り付いている、設備投資などに使われないわけですね。これはデフレ期待があるからそうなるんで、インフレ期待に変わると、それが動き出すと。そのお金で設備投資等、生産のための資金が調達できる。それでもう景気がどんどん良くなって足りなくなると、銀行に貸出しをお願いしに行くという循環になります。
 このプロセスは既に始まっておりまして、物価連動債などを見ますと、予想インフレ率は今一%ぐらいもう既に上がっています。今までデフレ予想していたのがもう既に一%上がっております。それがそういうふうになっているからこそ株高や円安が起こっているということで、もう既にそれが起こっている。この動きを止めないためには、やはり実際にゼロ金利の下ですので、量的緩和を進めていく必要があるということであると思います。
 第二本の矢であります財政出動というのも、これは、金融政策が、実体経済が動き出すまでに少し時間が掛かるので、つなぎのものとしては有効であるというふうに思いますが、しかし、金融政策が伴わないと、金利が上がってまた円高になり輸出が減るということで財政の支出の増大の効果がなくなってしまいますので、これもやはり大胆な金融緩和が同時に伴うという必要があると。
 それから、成長戦略も同じように潜在成長力を上げるわけですが、潜在成長力というのはそのままですとデフレギャップの要因になります。したがって、そのデフレギャップが生じないように、せっかく上がった潜在成長率を、実際の成長率も潜在成長率に近づくためにもやはり大胆な金融緩和は当分の間は必要だというふうに思います。
 そういう意味で、金融政策は三本の矢の中でも非常に重要な役割ということでありますので、私が日本銀行で仕事をする機会が与えられますれば、こうした金融政策の役割について私のこれまでした実証的、理論的な研究を生かして、職務に誠実に取り組みたいと思っております。
 本日は、このような機会をおつくりいただきましてありがとうございました。
委員長  次に、中曽宏君にお願いいたします。中曽宏君。
参考人
(中曽宏君)
 中曽でございます。
 本日は、所信を述べる機会を賜り、大変光栄に存じます。
 私は、一九七八年に日本銀行に入行し、以来三十五年間勤務してまいりました。その間、信用機構局信用機構課長、金融市場局長など、金融システムや金融市場に関する実務に携わりました。二〇〇八年からは理事として主に国際分野を担当してきました。この間、二〇〇六年からはBIS、国際決済銀行の市場委員会の議長として国際会議を仕切ると、こういう仕事も、機会も得ました。
 もし副総裁としてお認めいただきましたならば、日本銀行の組織に長く身を置いてきた経験を生かしまして、職員の力を束ねて全力で総裁をお支えし、また政策委員会の一員としてしっかりと議論に貢献していきたいというふうに考えてございます。
 まず、金融政策面からお話し申し上げます。
 日本経済は、米国、中国など、海外経済に持ち直しの動きが見られる中で下げ止まっております。海外経済の改善や政府、日本銀行の政策に対する期待も背景にありまして、株価の上昇や円安方向への動きも見られております。まさに、積年の課題でありますデフレからの脱却と物価安定の下での持続的な成長を実現するため、またとないチャンスというふうに思っております。これを生かすことは日本銀行の重大な使命であると考えております。過去二十年間、累次にわたる内外の金融危機対応の最前線に身を置き、日本経済の苦境を目の当たりにしてきた者として、この機会を逃してはならない、そういう強い思いを持ってございます。
 この一月、日本銀行は、政府との共同声明におきまして、消費者物価の上昇率二%を目標として、これをできるだけ早期に実現することを目指すとお約束をいたしました。その実現に向けて、政策委員会の他の八人の皆様とともに、前例にとらわれることなく、常に新しい発想で施策を生み出し、実行してまいりたいと考えてございます。この点、幾つかの点で私なりの貢献ができるのではないかと考えております。
 まず、金融実務面でございます。
 金融政策は、金融市場で金融機関との取引を通じて行うものでございます。とりわけ、非伝統的な金融政策におきましては、通常とは異なるオペレーションが求められますので、市場や金融実務に関する知識が重要になります。この面では六年弱金融市場局長を担当した経験が役に立つと考えております。また、これまで海外中央銀行の幹部との間に築いた人的ネットワークを通じまして、日本銀行の金融政策、そしてその目的とするところをしっかりと説明していきたいと考えております。
 次に、金融政策以外の面でございますが、日本銀行は、考査あるいは最後の貸し手としての役割など、金融システムの安定にも責任を負っております。九〇年代の後半の金融危機の時期に、日本発の金融恐慌は絶対に起こさないという決意で、ほとんど全ての破綻処理に携わった経験をこれらの業務遂行に役立てたいと思います。また、地震などの災害時も含めまして、日本銀行券を流通させ、日銀ネットなどの決済システムを円滑に運行することなど、間違いなく業務を遂行していく必要もございます。
 そうした日々の業務を支えているのが本支店約五千人の職員でございます。いっときたりとも中断してはならない業務を彼らは強い使命感を持って遂行しております。職員の高い士気を維持し、組織を結集することにより、政策委員会の判断と総裁の御指示に沿って、その意図を忠実に実現してまいります。組織運営面の面で総裁をしっかりと補佐することも私に課せられた重要な任務であるというふうに考えてございます。
 日本経済が極めて重要な局面にあります現在、日本経済のために貢献できる機会をお与えいただきましたならば、全身全霊、職務に精励してまいりたいと考えております。
 どうもありがとうございました。
(省略)
委員長  速記を起こしてください。
 まず、岩田参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
(省略)
委員長  この際、お諮りいたします。
 委員外議員広野ただし君、井上哲士君及び谷岡郁子君から本件についての岩田参考人に対する質疑のため発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
委員長  御異議ないと認めます。
 それでは、まず広野君に発言を許します。広野ただし君。
広野ただし  生活の党の広野ただしです。
 時間が五分ということで、往復で五分ですから限られておりますので、今まで丁重にお答えいただきましたが、簡潔にひとつよろしくお願いを申し上げます。
 アベノミクスでデフレ脱却をする。デフレ脱却は我々も大事なことだと思っておりますが、アベノミクスの中でパイを大きくすれば企業がまたもうかって、それが賃金が上がって所得が上がっていくんだと、こういうふうな筋書、皆さんそういうことだと思いますが、ここ新自由主義の中で、結局、パイはある程度行っても、デフレで下がったんですけど、実際は、所得格差が更に広がったという側面があります。
 そこで、ちょっと三点お聞きしたいと思っているんですが、一つはそういうことで、パイを大きくすれば全てハッピーということではなくて、やっぱり所得格差が広がる。オバマ大統領なんかが中間層を底上げをするというようなことを言っておりますが、貧困層に対する手だて等は政治の側面が非常に大きいと思っておりますが、そういうことの中で、失業率ですとか雇用ですとか、先ほども挙がっております、そういう点をどういうふうに考えられるのかというのが第一点です。
 そして二番目は、実体経済が付いてこなくてインフレが進行していくスタグフレーションというようなことがやっぱり懸念される面があります。そういう点で、そういう場合の政策調整はどうするのかということでございます。特に、マネーゲーム的な色彩を帯びてきて、一部の方だけはあるいはもうかるけれども、なかなか実質所得は上がってこないと、こういう点はどう考えられるのかという点であります。
 それと三番目が、出口戦略とも関係するんですが、二%アップができてきたと。そして、その後三年間、任期五年ですから、三年間も二%ずつ前年比上がっていくとなると、大体八%から九%、一〇%ぐらい物価安定目標、安定目標という言葉になるのかどうか分かりませんが、インフレは進行する。そういう中で、所得あるいは実質賃金が上がらないというようなことになったときに、政策調整はどういうふうに考えられるのか、相変わらず二%でずっと突っ走るのか、この点について伺いたいと思います。
参考人
(岩田規久男君)
 一番最初は所得分配に関することなんですが、金融政策は、やっぱり失業率を抑えるとか雇用需要を増やすということが一つですね。それは企業の生産活動が増えるから当然人が要るということで。したがって、雇用需要が増えるから失業率は下がる。そして、雇用需要が、だから非正社員よりも正社員がもっと欲しいというふうに変わってくるという。これがデフレの場合、逆回転するので、それが私は、失業率を大きくし、非正社員を大きくするということで、所得格差にしているという一つの要因だったと思います。
 金融政策は、今言ったように逆回転させるということで、しかしもっときめ細かな所得分配政策というのは金融政策にはできません。ですから、経済政策というのはいろんな役割があるからそれを区別しなくてはいけないんで、金融政策で何でも解決できるということを申し上げてはおりません。ですから、所得分配政策というのはやっぱりセーフティーネットというんで、私は、そういうので、昔民主党さんがおっしゃった給付付き税額控除なんかは非常にいい政策だと私は思いますけれども、そういうような政策がやっぱり必要です。ですから、金融政策はこれ、所得分配政策として政府がこういう政策をやると、これを分けるということですね。
 それから、スタグフレーションになるというのは、これは非常にサプライサイドが全然駄目で、だけれども、金融緩和でもって雇用を上げようとしたために生じた問題ですので、サプライサイドの政策というのを同時にやっていくというのが成長戦略だというふうに思います。
 それから、物価だけが上がってというのは、今言った、雇用が増えて需要が増えますので、必ずしも物価だけが上がるということはなくて、むしろ過去の需要が少し、需要圧力があるというのがインフレになるわけですね、二、三%。そういう経験は、戦後ずっと見てみますと、圧倒的に賃金の上がり方の方が高くなっておりますので、物価だけが上がって賃金が上がらないということはないということだと思います。
広野ただし  じゃ、最後にしますが、格差是正については金融政策の役目ではないという点を言われますが、FRBも結局失業率を六・五ぐらいにということも非常に重視して、先ほどおっしゃいましたのは、日本はそういう失業率の改善については非常に楽観的なことを言っておられますが、本当にそういうふうにいくものかどうか、もう一回伺いたいと思います。
参考人
(岩田規久男君)
 格差是正に貢献がないと、金融政策、申し上げておりません。金融政策は、失業率を下げたり非正社員より正社員の方が増えるという雇用需要全体を増やしますから、そこでもって格差が広がる。しかし、それだけでは足りないから、もっと政府のセーフティーネットの政策が必要だと申し上げたので、金融政策がうまくいかないとかえって失業率が高くなって非正社員が増えるというメカニズムになっていく。これはきちっと実証分析するとそういうふうになっておりますので、それは根拠が、ここのところではなかなかそれを説明できないので単なる空論になってしまって見えますけれども、私は全て過去の実証データを背後に申し上げております。
広野ただし  ありがとうございました。
(省略)
委員長  次に、中曽参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
(省略)
委員長  この際、お諮りいたします。
 委員外議員広野ただし君、井上哲士君及び谷岡郁子君から本件についての中曽参考人に対する質疑のため発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
委員長  御異議ないと認めます。
 それでは、まず広野君に発言を許します。広野ただし君。
広野ただし  生活の党の広野ただしです。
 往復で五分間ということになりますので、ひとつそれも考慮の上、御回答お願いしたいと思います。
 私たちもデフレ脱却ということは非常に大切なことだと思っております。そして、その中で物価安定目標二%アップということでありますが、アベノミクス全体がパイを大きくすればそれが好循環を生み出すんだと、企業収益を向上させ、そして所得が上がり、賃金が上がり、失業等も改善をされるというような、そして国民生活が向上すると、こういうような非常に好循環のことを言っておりますが、これまでの中では、新自由主義の中では、所得格差の拡大等ももたらされ、また貧困層も増えたりしているわけですね。ですから、そういう中で三つちょっと質問をしたいと思います。
 一つは、パイを大きくすれば自然におのずとうまくいくというよりも、いや、失業の改善等を、このFRBのように改善等も念頭に置きながら、あるいは所得の向上というものも念頭に置きながら政策を打っていくべきではないのかということが一つです。
 二番目は、実体経済が付いてこない。金融大緩和をしていっても実体経済が付いてこなくてスタグフレーションのようなことになっていくおそれがあるんではないのかということ、これもお答えいただきたいと思います。
 三番目は、二年後、二%、そしてその後も毎年二%ずつですから、五年間、任期の間に八、九%、一〇%近く上がるということになってまいりますと、実体経済が付いていけばいいですが、そうでない場合はマネーゲーム的な要素が非常に増えるんじゃないかということであります。
 その三点について、まずお答えいただきたいと思います。
参考人
(中曽宏君)
 まず第一点目でございます。
 パイを大きくする中で失業率を下げて賃金、雇用の向上も目指していく、これ自体、こういう方向性を目指すべきであろうというふうに思っております。
 問題が生じてくるような格差の部分でありますけれども、これは金融政策の領域ではないかもしれませんが、私ども先ほど出た中小企業の問題も十分認識をしておりますので、マクロ的な経済環境が好転する中でそういったひずみのようなものが出てきた場合、これはその支店の機能などを使って、これは情報をうまくピックアップしながら対応していきたいというふうに考えております。
 それから、失業率、雇用の問題でありますが、日本銀行の金融政策の理念、これは物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということでございますので、物価安定の目標を達成していくその道筋というのはこの理念の下で行われるわけでございますので、雇用の部分を金融面から支援していくという、そういう意味合いは既に今の日本銀行法の中にも入っているということが言えるのではないかと思います。
 そして、その二%、二%で実体経済の拡大が伴えばいいわけですけれども、御指摘のように物価だけ上がっていくようなことになりますと、もう一つはマネーゲーム的なものが先行してしまうようなことについてどうかということなんですが、これはそのとおりだというふうに思います。
 それゆえ、私どもは金融システムの安定にも日銀法上責任を持ってございますので、私どもの持っている機能を発揮をしながら金融の不均衡というものを早期に発見をして必要な対応を取っていくということが、そういったマネーゲームに陥らないためにも必要であるというふうに認識をしております。
広野ただし  以上です。
 ありがとうございます。